まんぷく29話は、戦争から帰ってきた忠彦が、判子を作る作業をしている家族に手伝うことはないかと申し出ているところから始まります。克子や福子から今まで通り絵を描いてと言われ、忠彦はアトリエに戻りますが、戦地に行く前に描いた絵を深刻そうに見つめていました。

 

神戸は元気に庭掃除完了を報告しますが、鈴は冷たく追い返そうとします。しかし、神戸は食い下がり、「ここに置いてください」と頭を下げます。そこへ割り込むように忠彦がみんなの作業場に戻り、作業を手伝うと言い出しました。

 

神戸も一緒になって手伝うと申し出ますが、鈴は出ていけと冷たくあしらいます。今度は克子が子供たちに勉強しろと言っていると、神戸が子供たちの勉強を見ると言い出します。

 

神戸は大阪帝大を卒業していたらしく、3人の勉強を見てもらうことになりました。泥棒に入った人間を家に入れたくない鈴は、嫌そうにしていましたが、福子は勉強を教えている神戸を見ながら、「ほりだしもんかも」と微笑んでいました。

 

忠彦は、行き場のない神戸にアトリエに寝てもらおうと提案します。それを聞き、克子は忠彦の制作の邪魔になるのではないかと心配します。忠彦は戦争中に敵の照明弾を間近で浴びてしまい、色の見分けがよく分からなくなってしまったことをみんなに話します。

 

緑と赤の区別がつかないらしく、軍医に見てもらったがこれは治るものではないと説明しました。絵はもう描けないと聞いた鈴は、「まともな仕事についてくれるのね」と尋ね、忠彦も「そのつもりです」と答えていました。

 

夜、布団に入りながら、福子は萬平に、忠彦が絵を諦めることが出来ないと思っていること話します。きっと克子も同じことを考えていると話していました。ある日、混沌とした闇市を福子と萬平が歩いていると、地べたに座りハーモニカを吹いている男性が目に留まります。

 

それは加地谷でした。福子に声をかけられ、「久しぶりやな」と少し居心地悪そうに答える加地谷に、福子は「ひーさーしーぶーり-?」と非難するように突っかかります。

 

さらに普通に挨拶をする萬平にも福子は怒ります。萬平は、加地谷のせいで無実の罪で憲兵に捕まり、拷問に近い取り調べを受け、腹膜炎にまでなって死にかけたことを福子が責めるように話すと、加地谷はただひたすら謝るばかりです。

 

許してくれと言う加地谷に、萬平は「許すも許さないもない、もうあなたを追いかける憲兵は居ない」と答えます。加地谷は萬平の才能に嫉妬していた自分に絶望していました。

 

「もう、生きている意味が分からない」と抜け殻になった加地谷を置いて、萬平はそのまま帰ろうとしますが、福子は加地谷を睨んだまま立ち去ろうとしません。

 

萬平は「憲兵に捕まったおかげで、福子と結婚することができた。」と加地谷に言い、「もう帰ろう」と福子に声をかけ、福子もようやく萬平の後について行きました。

 

家に帰った萬平は神戸が焚いているお風呂に入ります。着替えを持ってきた福子はお風呂の戸を隔てて、「もう本当に加地谷の事を何とも思っていないのか」と萬平に尋ねます。

 

萬平は「世の中には人を恨むことで頑張れる人も居るかもしれないが、自分はそうではない」と答え、福子も加地谷がかわいそうだと思っているのではないかと逆に聞いていました。

 

すると、福子はその問いには答えず、「分かりました、私はもう何も言いません。」と約束しました。お風呂の火を焚いていた神戸はそのやり取りを黙って聞いていました。福子が立ち去った後、萬平はその神戸に頼みがあると声をかけます。

 

翌日、また加地谷が同じ場所でハーモニカを吹いていると、神戸が加地谷と言う人かと声をかけます。神戸は萬平から渡すように言われた物を加地谷に渡します。そして、「諦めないでどうか生き抜いてください。

 

あなたの人生の主役はあなただ」という萬平からの言葉を伝え立ち去って行きました。渡された小さな封筒の中には、加地谷の名前が書かれた判子が入っていました。加地谷はそれを見て泣きながら、萬平への謝罪と感謝の気持ちをつぶやいているところで今回のお話はおしまいです。